●茨木のり子『詩のこころを読む 』 / 詩・おぼえてますか?
茨木のり子『詩のこころを読む 』を読んだ。
この本は岩波ジュニア新書ということで中高生を主な読者に想定したシリーズの中の一冊であり、日本を代表する詩人である茨木のり子が、詩の初心者に対して「生まれて」、「恋唄」、「生きるじたばた」、「峠」、「別れ」をテーマに自分の好きな詩を載せて解説してみせるという体裁になっている本である。
1979年の発刊から今に至るまで同じペースで売れ続けているロングセラーである。
昔から詩と絵画と写真をちゃんと見てみたかったのだが、ずっとどこから手をつけて良いかわからなかった。
しかし今年ある人に聞いた「芸術を鑑賞するのは個人的なものでしかないから、勉強するより先に触れたほうが良い」という言葉を聴いて、とにかく何かしら反応した写真や絵画や詩に触れてみようと思っている時に、某キノコ先生に教えられて読んでみた。
ちょっと読むたびに自分の中の深くて柔らかい所にヒットする密度の濃さにびっくりである。
どの詩もなぜか懐かしくその詩一つの中にとても大きいあらゆるものが含まれていることが感じられてグッと来る。
「こ、これが詩というものか!」「デカルチャーー!!!」であった。
著者が紹介した詩を私が読んで何かを感じて思い、そしてその詩について著者が書いていることを読むのは、ちょっとした著者と対話に近いものがある。
茨木のり子の解説もちょっとした感想から技術的な解説までとても参考になるし、なによりもこの解説すらちょっとした詩のようにすら感じる。
とりあえずは一気に読んだけど、一度読み終わったら終わりな本ではなく、ことあるごとに何度も読み返したくなること確実な本であろう。
この本を買ってから事あるごとに取り出して適当なページを開いて読んでいるのだが、読むたびに新たな発見があり「胸が熱くなるな」である。
この本の詩のどれもが初めて読んだはずのものでもなぜか懐かしく自分の中の深いところにあるなにものかを激しく揺さぶられる感触がある。
これを一通り読んで気に入った詩人のものを読んでゆくといったスタートラインとしての本にもなりうるだけでなく、一冊の本としても完全に完結して完成されているのがとても素晴らしい。
ネット上には読んでいるだけで恥ずかしくなるような「痛ポエム」「中二病ポエム」「増田ポエム」なるものが氾濫してるけど、詩の世界というのはとても間口が広い割りにその深さはとてつもないものだとつくづく感じた。
そしてそんな「痛ポエム」「中二病ポエム」「増田ポエム」でも自分の中の何かが揺さぶられていることには間違いないのだ。
なんだかこの本を読んでいると、小学生の時に見た「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか 」の最後のシーンを思い出した。(ご存じない方はこちらの解説が素晴らしいかと)
「何万年も前に異星人達の街で流行った、当たり前のラブソング」が戦争を止めるというある意味でぶっ飛んだ話であるが、ミサイルとレーザーと戦闘機が飛び交う宇宙での戦闘シーンを背景にあたりまえのアイドルがあたりまえの流行歌を歌い、そのアイドルの歌に共鳴した敵が味方になるシーンに当時は胸が熱くなったものだ。このブログを書くにあたって久しぶりに最後のシーンだけ見直したが今でも胸が熱くなった
当たり前の歌や詩が戦争を止めて世界を救いうるかもしれないという可能性に、「痛ポエム」「中二病ポエム」「増田ポエム」なようなものでも世界を救いうるかもしれない。ということを思わせてくれる本であった。
「プロトカルチャーー!!!」