●フルメタル部屋の片付けその2 / 心まで鋼鉄で武装するオヤジ
フルメタル部屋の片付けその1 / 散らかっていない部屋はよく訓練された汚部屋だ
の続き、未読の方は上記エントリを先にお読みいただくのをお勧めします。
部屋の掃除をしようと思い立ったものの、「汚部屋脱出支援サイト」を見るうちに私の部屋は「部屋の掃除」以前に部屋の片付けが必要であることがわかった。まず掃除のレベルまでたどり着けないと意味がない。
この状態で掃除を始めようとするのは、宝くじを買いすらしていないのに一億円の使い道に頭を悩ませるようなものである。
さらに、部屋の片付けといっても、一度に全部やろうとすると収拾がつかなくなって途方にくれた挙句、物が広がりすぎて余計汚くなり寝る場所すらなくなる。ということが過去に何度もあった。
物が散らかりまくった部屋をそのままに台所のテーブルの下で寝るとか、廊下で寝袋に包まってビバークとかいった、「なぜに自宅でサバイバル?」といった事態は避けたいので、とりあえず今日はこのコーナー、今日はこのあたりと部屋の一角ずつを片付けてゆくことにした。
衝動的に思いついたものの、戦略的に部屋の片づけをしたのは始めてである。
片付けの先達の助言をリアルでもネットでも求めて、ありとあらゆる情報を集めて立てた基本方針は以下のとおり、
・一日に部屋の一角ずつやっつけてゆく
・まずいらないものを捨てる
・迷うものは積極的に捨てる
・収納場所がすでにきまっているものはそこに収納
・微妙なものは保留ボックス
・ついでにハタキもかけてほこりを飛ばす
・一区画終了後は保留ボックスをクリア
・拭き掃除と掃除機は全区画終了後
そして、これを生身で行うのは危険なので装備を装着して武装する。
まず汚れてもいい服を着る。
そして埃が酷いのでマスク
私の部屋は埃だけでなく、プラスチックやらアルミやらの粉も堆積した部屋であるのでこれは必須。
そしてイボイボ付き軍手
これも汚いものやら痛いものまでむんずとつかむのに必須。埃やらなんやらからの手荒れもある程度防げるし、イボイボつきは重いものや滑るものを掴む時の滑り止めにもなる。
足にはウレタン製の足袋
ネジやらバネやら良くわからない部品を踏むと痛い上に素足では寒いので装着である。
そして斜めがけのかばん
中に片づけ中に何かをまとめたり切ったりする時に必要となるハサミ、ニッパー、タイラップ、ガムテを入れ、部屋から発掘された硬貨やら小さい部品やらそういったものも発見しだい捕獲して入れておく。
そして腰にベルトを巻いて、布製の和ばたきと羽ばたきの二つを打刀と脇差のごとく二本差しする。
カーテンレールや長押や竿縁など大雑把なる場所は和ばたきで「ばしっ!ばしっ!」と、スピーカーのコーンやらPCなどデリケートゾーンなるはこの羽根ばたきにて「さわさわっ」と埃を払うでござるよ。
武士的装備の次にベルトの後ろには洋風装備、バックサイドホルスターに収めたガスガンとハンティングナイフを装備である。
部屋の片付けに銃とナイフなんか意味がわからんが、こいつはGが出現した時に速やかに射殺したり、何かを切断するだけでなく、「いらないもの」と判断したものの微妙に捨てがたいものに止めをさすために使用する。
脆いプラスチック製品は紙類はガスガンで「ばすばすっ」とゼロ距離射撃、BB弾が貫通しないものはナイフアタックである。
今まで私は部屋の掃除や片付けはいやいやながら消極的に行うことが常であった。
しかし、将来なりたいものは「プレデター」、尊敬する人は「プレデター」、好きなタイプは「ミラ・ジョヴォヴィッチ」なる戦闘民族見習いの私は今回初めて、掃除や部屋の片づけを精神的に限りなく戦闘行為に近いものとして楽しみながら行うことになった。
ハタキを二本差ししたうえに銃とナイフを装備すれば士気も上がるのである。
部屋の埃がひどいので、窓をフルオープンして扇風機で風の流れを作って強制的に部屋の埃を排出し、一心不乱に部屋を片付ける。
片付けながらはたきで埃を吹き飛ばして扇風機で強制的に部屋から排出、ちょっと迷ったものは銃かナイフで止めを刺してゴミにして、明らかにいらないものは一般ゴミかプラゴミのいずれかへ、収納場所が決まっているものはその場所に、決まらないいるものは保留ボックスに投げ込む。
テンションをあげるためにモーツァルトのオペラを大音量で、クレンペラー指揮の「魔笛」の夜の女王のアリアを鼻歌で歌いながらふと鏡に映る自分の姿を見てあきれた。
顔にマスク、手にはイボイボ軍手、足には足袋、スイス軍のガスマスクポーチを斜めがけして、腰にはハンドガンとハンティングナイフと「はたき」の二本差し。どこからどう見ても部屋の片づけじゃない。この無駄な装備はどちらかというとモンハンか「こち亀」最後のコマで「両津のバカはどこだ!!」と怒る大原部長のようである。
「俺って馬鹿じゃね」とクスッとしてふと開け放った窓越しに外を見ると、以前ガスガンで的撃ちしていた時に目が合った新しく引っ越してきた裏の奥様とまたしても目が合った。
精神的に戦闘モードに入っていた私は無意識に腰の後ろのガスガンに右手が伸びそうになるのをぐっと抑えて奥様を良く見ると、明らかに「この人何??」的な目をしている。
奥様は自分が見られたことを悟ると会釈してそそくさとその場を離れようとしたので、私は「どうもこんばんわ…」と会釈するのが精一杯であった。
隣の奥様の中でますます「怪しい度」がアップした私であるが、心の中で「掃除してるだけなんです…違うんです!!すごい装備ですが、掃除してるだけなんです!!」と伝えたかった。
なんでこんなに楽しく普通のことをしているだけなのに世界は生き難いのだろうと散らかった埃まみれの部屋で呆然と立ち尽くすのであった。
次回、部屋の片付け進展編、乞うご期待(まだ引っ張るのか!?)